ソローヒルから



寺田太郎作


2009年春から初夏へ

1週間、庭とご無沙汰していたら、草が30センチも伸びている。枯れ枝に緑 が芽吹いて、あたりはすっかり春の様相。あわててしまった。
花木に花が次々に咲き始めている。庭で はモッコウバラが盛り、母のおおむらつつじが咲き出し、ハナミズキの白い花、コデマリが白い花を群れさせ、おおでまりがどんどん白さを増し、エニシダが遠慮がちに白と黄の蝶の花を咲かせている。つつじの赤紫も美し い。アヤメは紫を濃くしている。
野菜花壇で は、サヤエンドウの花がきれいに満開で、鞘も付け始めた。タマネギは掘り出し頃。
エドが夏野菜の植え付け。ここは畝が一 直線の畑らしい畑。敷地に隣接していた空き地を借りたのだ。下の農家の方が、ユンボで土を掘り起こしてくれた。ジャガイモはすでに芽を伸ばして苗になって いる。
03年の家を建てるときに造った庭の17段の一番長い階段。石を埋めておいたのだが、どうしても草が生え、歩くのに邪魔になる。5年越しの構想でついに3 月、
モルタルを敷き詰め、川と海岸の模様に作った。エドはここを「しか渓谷」と名付け、鶴田は「流水階段」
と呼ぶが、どちらがよいでしょう。
これからが勝負時の庭仕事。果たして虫や草が勝つか、私たちが負けるか。なんて勝ち負けではなく、共存か自然淘汰だ。
今年の気候はとても変で、暑かったり、雨が多かったり、植物たちも惑わされている。タチアオイは一月早く咲き出しそう。



© Edward Levinson

1月から3月中旬までは家の内外の仕事 で忙しい。丸裸の庭では剪定と寒肥、植木の植え替えや植え付け、階段や小道を整え、美観を造るのに努力をする。
室内では、税金の申告や、収納の整理整 頓。そして何よりも、本の校正に精魂を傾け、そしてついに3月に発売されることになりました。本のページ、ニュースの
ページをご覧ください。
寂しかった周囲の田畑や野原には、人の姿が見られるようになった。田んぼや畑の土興し。甘夏ミカン狩り。
山菜摘み。花摘み。山の手入れ。枯れ草刈り。
つかの間の冬の休息が終わり、いよいよ仕事が忙しくなる。

以下はソローヒルガーデンと同文です
辺り一面茶色の暖かさに満ちている。朝日、日光、夕日に照らされて、枯れた草木から体温が発せられている。北風・南西の風の中で、長いススキの穂と草は大 きく自在に揺れ、草としての自由を愉しんでいる。キョウチクトウや樅の木、枇杷や月桂樹、金・銀のモクセイ、椿やサザンカなど常緑樹は超然としているけれ ど、イチョウ、コナラ、木槿やヤマボウシ、楓やアジサイなどの落葉樹は、ちょっと頼りなさそう。春を待ちわびている。
私たちは剪定と寒肥に毎日大忙し。6段の階段を上がり下りし、肥料や土を運ぶ。植え付けたり、掘り出したり、また植え付けたり。土の掘り返しには力がい る。毎日体のあちこちが痛む。
そんな中で唯一の慰めは、ニホンスイセンの群生や株から良い香りが立ち上がり、私を包んでくれること。花束にして室内に飾ると、どの部屋にも甘い香りが 漂っている。サザンカははらはらと散ってそろそろ終わりだ。けれど次の椿が咲き始めている。紅白のわび助、乙女など、サザンカに優るとも劣らない華やか さ。沈丁花も咲いて香っている。


© Edward Levinson

足下にはホトケノザやふきのとう、のび るが生えている。
菜園では冬の青い菜っ葉が元気で、菜の花の黄色も目を愉しませてくれる。
けれども2月には20度前後の日が何日かあった。この暑さではニホンスイセンも早く萎れてしまいそう。まだ蕾もあるし、もう少し長持ちしてもらいたいのだ が。
ハクモクレン、トサミズキ、ツツジ、雪柳、レンギョウ、バラなどの蕾が日に日に膨らんでいる。チューリップやヒヤシンスの球根も芽を伸ばしている。クリス マス・ローズはほとんどが蕾を丸くし、花開いた株もある。ネコヤナギがほわほわした花穂を枝一列に並べている。菫も1輪ずつ花をつけている。一季節早く来 てしまったので、植物たちも戸惑っている。
うれしいのが毎日訪れているめじろや四十雀やひよどりたち。下の梅林の白梅の枝に、小さな鶯がいて、ホーホーと鳴ているのだけれどケキョとまでは言えず、 私が口笛を吹いて教えて上げたのだが、まだ真似できない。
トビーは、狸を追いかけて森の中へ。うなり、吠え、いっぱしのハンターとしての仕事を得意気に果たしている。でもトビーは狸にそっくりなのだがなあ。


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2008年12月
 我が息子トビーが始めて飛行機に乗ります。エドがアメリカに行っている 間、私たちは年末年始を博多で過ごすのですが、飛行機で行きます。
(済みません、C02を出すものを使っ て。この分は、石油と電気を使わずにー太陽光発電機の電気を使うー埋め合わせましょう)。トビーは車に乗るのが大好きなので、というより私の膝の上だから か、「きっと喜ぶわ」と前の飼い主が言います。「これで本物のトラベラーね」。今からキャンバス地のキャリアーの中に入れて訓練しているのだけれど、自然 児、野生児のトビーはこんな小さな檻の中は大嫌い。
2時間を一人で
持ちこたえなければな らないのはかわい そう。それでもトビーは
ママとずっと一緒にいたいので、我慢するでしょう。私の膝の上では何時間でもぐっすり眠るのだから、客席に乗せて行きたいのだけれ ど。やはり動物は動物扱いされるのだ。私に
とっ ては赤ん坊なのだけれど。


© Edward Levinson


最近は暖かい日と雨降りが交互にきて、 エコ暮らしが楽になっている。
すなわち、外が10度以下でも室内は 20度にはなるので暖房が要らない。
雨が降るので水が溜まる。この両方で植 物の育ちがいい。赤や黄や茶色の木の下で、緑の野菜がみずみずしい。薪も減らず溜まる一方。でもこれって温暖化だから、別の地域では環境破壊になっている のだ。喜んでばかりはいられない。エゴでエコ、エコでエゴ。困ったものだ。

11月
落葉樹の枝先が空の中で震えている。くさぐさも茶色に変わった。いよいよ冬 だなあ、と覚悟をする。すでに薪ス トーブを使い出している。薪は1年分を確保してある。そしてまた、どこかの建築現場から切り出された木々が運び込まれた。ありがたいことだ。
いろいろな課題がある中で、最近、ウッドデッキを緑化しようと考えている。まず、いただ いたシダ類を大きな長方形の鉢4つに分けて入れ、並べたら、よく映 える。デッキにはだんだんに鉢が増えるだろう。

井戸水と雨水は涸れている。もう一つ井戸を掘らなければならないかもしれない。

毎日カラスがやってきて柿を食べたので、あの鈴なりだった柿は一つしか残っていず。次の果物はキンカンとミカンだ。今年は鳥たちよりも早くキンカンを収穫 しよう。


10月
ようやく秋らしくなり、9月から10月にかけて秋の長雨になった。30畳分 のウッドデッキのペンキ塗り替えが、 どうにか間に合った。勢いよく雨を跳ね返しているので頼もしい。けれどそれは、デッキに水溜まりが出来ると言うこと。雨後の清掃が大変だ。しかし、ここに 座ってみる雄大な景色のご褒美がもらえるのだ。
秋の庭仕事がたくさん待っている。夏の名残を片付け、土を耕し、苗や種や球根と入れ替える。