この地域は早場米の産地だから、見渡す田んぼ はもうほとんどが稲刈りを済ませている。九月に入っても残暑はあるから、その暑さが、夏はまだここに、と愛惜の心を力づけてくれるのだが、目に映る景色に 行く夏への気持ちが逸る。
今年もまた天災・人災をことのほか強く恐れる季節になった。考えてみると、もはや一年間で、安穏と過ごせる日は少なくなった。何事につけ防衛、自衛をしな くては。この二つの言葉自体、何やらきなくさくて発するのはいやだが。
そんな不安と雑音を打ち消してくれるのが、鳥たちの鳴き声。蝉の声もまだ高い。そして夜ともななれば、彼らに代わって虫たちの声が、悠然たる自然の歩みと 響きを伝えてくれる。この自然が、ある日突然の怒りを表さないことを祈って。