頭上に360度、空ばかり眺めることが多くなった。白い雲の流れと共に、思いはいろ いろな地方や外国へ飛ぶ。先日は名古屋に行った。取材の一環で、ある絵画をわざわざ見に行った。新幹線で行って帰ってきただけだが、こんな風に今は隣町へ 行くようにどこへでも行ける。ただし、どこへ行くにも危険と隣り合わせで、無事に帰れる保証はない。ギリシャを出発して、トルコからイラン、アフガニスタ ン、パキスタン、インドと中近東のバスの旅をしたのは、まだ世界がこんな混乱状態になる前だったが、それでも命がけだった。けれども個人的にはあたたかい 心の持ち主ばかりで、素朴な人柄、国柄に魅了された。

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今は、そのような国々ヘ行く、勇気も体力もない。けれどももう一度ゆきたい国々があ る。イタリアのアッシジ、スペインのバルセロナ。
それからそれから。核兵器で世界が吹っ飛ばない内に、平和憲法が生きている内に、もしかしたらそれは夢 になるかもしれないから、現実のままであるように求めてはいるのだけれど。決して変化することのない、太陽や月の存在のように、確固とした平和であってほ しい。